miu
もう10年も経っただろうか。
友人が事故で死んだ。
バイト先でたまたま知り合った同い年の彼は、年上にも年下にも男女問わず慕われる人間だった。仕事もできるし、ユーモアもあって、同い年とか関係なく尊敬できる人で、人見知りがちな私でもふたりで会話するのが苦ではない、そんな人間だった。
そんな彼の訃報を聞いたのは雲ひとつないような夏の晴れた日、バイト先でいちばん仲のいい女友達で、彼の恋人からだった。しんじゃった。悪い冗談であってほしかった。対向車線の車がいきなり線を超えて彼に突っ込んだのだと後で新聞で読んだ。私よりも辛い人はたくさんいただろうが、身近な人の死を初めて感じた私は動揺した。
ちょうどハルカトミユキのマゼンタと絶望ごっこを聴いたのがこの頃だった。私のことかと思った。逃げるように歌を聴いた。
今でも思う。彼より私がいなくなったほうがきっと世の中とか、周りの人とか、よかったんじゃないかな。彼は立派な人だったけど、私はこんなんだし。全部中途半端だし。
でもこうも思う。それで私が死んだとしても彼は生き返ってくれないし、じゃあ私は私なりに今からでも何かしらもがいた方がいいんじゃないかって。生きにくい世の中だけど、たまたま今も生きられてるなら、動いた方がいいんじゃないかって。どうせ人間いつかは死ぬし、後悔のない人生なんてない。じゃあ、その後悔をひとつでも減らせるように動いた方がいいんじゃないかって。小さな夢でもいいよ。死ぬまでに友達と意味わかんないくらいデカいバケツプリン作って食べたいとか、そんなことでもやりたかったらやったほうがいいんじゃないかって、そう思ったよ。
泣きながら聴いたふたりの曲に、あの頃の私は確かに救われました。ありがとう。