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新山詩織(ミュージシャン)
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「私の10年間と、夢」
2012年12月12日高校2年16歳の冬、アーティストデビューという形で世の中に自分の存在が知られた。それからは何もかもが初めてで、とにかく流れてくる波に乗れるよう必死だった。
溢れんばかりのサポートのなか、Liveイベントやドラマ出演、たくさんの機会を通して音楽の楽しさを実感し出会いや繋がりも出来、充実した日々を過ごしてきた。
20歳を超えたあたりでデビュー当時には見えなかったものが良く見えるようになり、自分はどうありたいのか、本当にしたいことは何なのかを考え始めた。そこで自分自身と向き合うために、音楽活動を離れることを決めた。2年間ほど専門学校に通った。そのなかで今でも印象に残っている出来事がある。
ある日の昼休み、ひとり後ろの方でお弁当を食べていたら、クラスメイトの女の子がいつものグループから抜け「隣で食べていい…?」と私の元へやってきた。ご飯を食べながら二人で他愛のない会話をしていたら、突然その子が「すみません」と言い泣き始めた。大丈夫?何かあった?と尋ねようとしたが、周りに気づかれちゃいけないと思い咄嗟に抱きしめてしまった。
「かわいい」をそのまま描いたようなその子は、声帯に僅かな障害があり上手く発声することが出来なかった。それでもいつもニコニコしていておしゃれさんで、友達に囲まれながらいつも楽しそうだなと、外から微笑み眺めていたので、正直驚いた。
でもそれは初めてのオリジナル曲「だからさ」ができた時と同じだと思った。人間関係が上手くいかず、怒りも虚しさも誰にも言えず、とにかく学校から抜け出し帰宅し、泣きながらがむしゃらにペンを走らせ出来た曲。
本当に伝えたいことがある時、涙が出る時は特別な理由なんてなく、こんな風にただただ自然と流れてしまうものだったなと思い出した。その根っこがあったから、歌を歌えているんだと改めて実感した。その子の姿が、少し立ち止まっていた自分の心を動かしてくれた。
そんな専門学校を卒業したすぐの去年4月、再び音楽活動を再開することとなった。
年齢を重ねる度に正しい、間違いの狭間で揺れることが増えた。でもたった一つの人生、後悔だけはしないように。家族や友人やファンのみんな、目の前にいる大切な人と、素直な感情や言葉を共有していきたい。時間を重ねていきたい。
それが今までと、これからの私の夢です。
新山詩織