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SUPER BEAVER 渋谷龍太(ミュージシャン)
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「あなたの十年間」というテーマをもらい、どこを切り取った十年にしようか、と少し悩む。そして申し訳程度に付随している、「夢」というテーマに関しては大いに悩む。
しかしながら自分が語れる十年といえば、メジャー転落あたりからの乱高下のある十年だろう。世間など知らぬ二十代前半の自分がぶち当たった、社会という壁。しっかり戦うことのなかった自分。今考えてもなかなかに香ばしい。年齢での大人と、立場としてのオトナがいることを知ったのだ。
ただやはり挫折の上だったからこそ、それ以降の自分は人の温情というものに気が付くことが出来た。そうでなかったとしたら、のほほんとしたまま気付くことさえなかったかもしらん。考えただけでもかなり怖い。
で、その時明確に思ったのだ。そばにいてくれた人に、手を差し伸べてくれた人に、そして何より自分たちの音楽を愛してくれる人に笑っていてほしい、と。与えられたその温情以上に自分たちが応えたい、と。即ち、これが生まれて初めて自分が抱いた夢だ。
齢三十五のまだ若輩が思うことなので聞き流してもらうのも構わないのだが、夢なんて些細でいいと思う。宇宙飛行士になりたいとも、野球選手になりたいとも、別に思わなくていい。大それた野心だけを夢なんていうから、夢に向かう姿が美徳化され過ぎるのだ。逆を言えばそういう類の夢を持っていない、という姿勢に対して世の中は無駄に当たりが強過ぎる、とそんな風に私は思ってしまう。
手のひらに収まる自分の幸せを大切にしたいというだけで、それだけで立派な夢だ。手のひらに収まる幸せを自分以外の誰かと共有したいと思うのは、かなりかっこいい夢だ。
ハルカトミユキは私が夢を抱いてすぐ、人の体温至上主義になったあたりで出会っている。だから私は、彼女たちの音楽が素敵だ、と思ったのだろう。
まだ十年、もう十年。人に言わせれば千差万別、自分で言ってもその時々。
ますます脂乗ってきましたね、音楽も人間も。
長々語っといて言うのもどうかと思うのだが、本当に一番伝えたいことは頂いたテーマ云々なんかじゃなくて。手のひらに収まるくらいの人肌のメッセージなんだよね。
よし、今から言うぜ!
ハルカトミユキ、十周年おめでとうございます。
SUPER BEAVER フロントマン 渋谷龍太