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    楠木ともり(声優・シンガーソングライター)

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    2022/10/08 12:00

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     今年23歳になる自分にとって10年というと、物心ついて自分を自分だと認識してからを考えれば、これまでの人生の半分を過ぎてからになる。

     今している声優の仕事に憧れたのは、ちょうど13歳くらいだった。早く大人になりたいくせに大人になる自覚はなかった自分にとって、好きなことを夢中になって形にできる、ある種の研究職のような声優は、不透明な将来が輝いて見えるほど魅力的だった。


      幸運にも同じ夢を持つ友人と出会えたことで、私は稚拙な夢に次第に本気になっていった。周りの目を気にしながらセリフを読んで、ああでもないこうでもないと言い合った帰り道が懐かしい。

     高校生になると同じ夢を持つ友人とは離ればなれになってしまったものの、姉がオーディションを見つけてきてくれて、新たな友人が寄せ書きで背中を押してくれた。第二の部活動のようで本当に幸せな日々だった。

    今思えばこの「遊び」の延長であった日々が私の10年である。

     声優という進路に反対こそされなかったものの、両親は学業を優先し私を養成所に通わせてくれなかった。デビュー後、私の師は現場にいる先輩声優方となったが、それまではずっと、自分で模索し続ける「遊び」でしかなかった。

     夢を見るばかりで、嫌なことから無意識に目を背けていただけかもしれない。でもだからこそ楽しい気持ちのままに夢を追いかけ続けることができたし、今辛いことがあってもその気持ちを捨てずにいられる。遊びのように楽しむ気持ちさえあれば案外心は折れづらいものなのだと実感した。そして背中を押してくれた家族や友人に恩返しをしたいと思う気持ちが、今日の自分の心を更に強くしている。

     「単純な奴には敵わない」

    父の言葉である。


     こうして自分を振り返ると、この言葉を聞いてから単純であるよう努めてきたように思う。後先考えず夢を追いかけ、応援してくれる友人に恵まれたことで恐れることもなくなり、運良くここまで来てしまったようなものだが、もちろんたくさんの壁や挫折もあった。でもそんなことをここに書かなくてもいいほど、私は恵まれた自分を愛せる、いい意味での単純さを得た。

     もともとは小難しいことを考えてしまいがちな性格なので、考えすぎて未だに苦しくなることも多い。そんな自分を支えてくれたのは、楽しむ気持ちを忘れなかった単純な自分であり、支えてくれた人への恩返しをしたいという純粋な自分である。「声優になる」という夢を叶えても、その後何度夢を叶えても、止めどなく次の夢が更新されていくのは、まだまだ自分が楽しみたいと思っているからだろう。あまりに単純なのも考えものだが、どんな壁にぶつかっても、どんな人に出会っても、この気持ちを何十年も大切に育んでいける人間でありたい。そんな土台ができたのが私の10年だ。

     これから先この土台からどんな夢の種が生まれ、どんな花を咲かせていくのか。どんな花でいっぱいの花壇にできるのか。私は今から楽しみで堪らない。  




    楠木ともり



    https://www.kusunokitomori.com

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